1968年6月下旬、ヤードバーズ解散報告が駆け巡り、同年7月7日 ルートン工科大学でのコンサート後、キースレルフ(ボーカル) 、ジムマッカーティ(ドラム)が脱退。後に、クリスドレヤ(ベース)もカメラマンになるべく離脱。
ペイジの元に残ったのは、凄腕敏腕強面マネージャーのピーターグラントと、“ヤードバース”名義の契約書。
9月のスカンジナビアツアー、10月のイングランド各地の大学ツアーが控えている。
ペイジは新メンバーを得るべく奔走し、プラントを見出し、そのつてでボーナムも得て、ジョーンズが加入した。
というのが、1968年8月12日を迎えるまでのダイジェスト。この概要で間違ってないはず。問題はここから。文献によっていろいろブレてる……
◎三人の加入時期
1:プラント・ボーナムを見つけた後、ジョーンズから打診があった
2:ジョーンズから打診があって、その後プラント・ボーナムを見つけた
◎クリスドレヤの脱退時期
1:ジョーンズの打診があったのち、カメラマンになるからと離脱
2:ジョーンズ打診前に、カメラマンになりたいからと離脱
◎ジョーンズの加入経緯
1:ペイジが直接ジョーンズを口説いた
2:スタジオで休憩中のペイジにジョーンズが直接打診した
3:ペイジが新バンドを結成するという記事を見たジョーンズ夫人が、電話するよう夫に進言した
本人達も関係者もライターも言ってること書いてあること、みんな微妙に違ってブレブレ。
取り敢えず、個人的にツェッペリン関連で最も信頼できるデイヴルイス氏(英国公認ファンクラブ元会長でファンジン「タイト・バット・ルーズ」編集長) の書籍『Led Zeppelin A Celebration』の年表から紐解いてみる。
1967年
プラントとボーナム出会う
1968年4月
ドノヴァンの「ハーディーガーディーマン」のセッションでペイジとジョーンズが共演。ペイジが新バンドを結成するとの噂を聞いたジョーンズが加入を打診。
※ この時点では、クリスドレヤ(ベース)はニューヤードバース残留予定
1968年5月
プラント、バンドオブジョイ解散
ボーナム、ティムローズとツアー
1968年6月22日
キースレルフ(ボーカル) 、ジムマッカーティ(ドラム)が脱退。
1968年7月7日
ヤードバース最後の公演
1968年8月
・ペイジ・ドレヤ・グラントの3人はバーミンガムの教員養成学校でのコンサートにて歌うプラントを視察。後日、プラントを自宅に招いたペイジは彼を新バンドに誘う(この時、プラントがボーナムを推薦する?)
・ドレヤ、ニューヤードバースに参加しないことを決断。それを受け、ペイジは以前加入を打診したジョーンズに連絡する
・ボーナム、再三の新バンド加入要請に応じる
・8月12日 ジェラードストリートの地下室にて初セッション
時系列的にはこれが最も事実に近いと思う。
ただ、ジョーンズ加入の時期がちょっとモヤモヤ……
ジョーンズ曰く
「膨大なセッションの仕事にウンザリしてた時、ジミーが新バンドを作るという記事が『ディスク』誌に載ってると妻が教えてくれて、電話してみたら?と言ってくれた」
「ジミーに電話をした時、彼はバーミンガムにロバートを観に行こうとしてるところだった」
「バーミンガムから戻ってきた後で話しをしたら、ロバートは最高でドラムも推薦してくれたとのことだった」
「ピーターグラントは 私たちのバンド にジョンを加入させるために週40ポンドの仕事を辞めるよう言い包めなければならなかったんだよ」
私たちのバンド(敢えての強調)……いい言葉ですね。というか、この言い方だとプラント加入前には、既にジョーンズはペイジと組んでることになるよね?
はい、もうブレてる。時系列がブレてる。ジョーンズのインタビューを前提とすると、上記の年表の4月加入打診から8月プラント視察まで間が空き過ぎてる。
ヤードバースは6月上旬に最後のレコーディングと最後のUSライブがあって、6月下旬に解散報告。ペイジとジョーンズのセッション共演の4月時点で既に解散と新バンド結成の噂は業界内では広まってたかもしれないけど、多分この時は普通に何事もなく二人とも仕事こなしたのでは?
4月にジョーンズから打診を受けてたとしたら、ペイジは一旦断ってたってこと?そんなもったいないことする?しかも、断っといて5ヶ月後に「やっぱりよろしく〜」なんて、ありか?こちとら売れっ子セッションマンやぞ?ペイジはジョーンズからの加入希望の連絡に「渡りに船!ラッキー!」ぐらいの勢いでOKしたとか言ってなかったっけ?
それにしてもジョーンズのインタビューを加味した上で考えると、ほぼ10日余りでツェッペリン全員が揃ったということになる?
ヤードバース解散→メンバー探し→ジョーンズからの電話(プラント視察直前)→プラント視察(ドレヤ同行)→プラントがボーナム推薦→ボーナム難色示す→私たちのバンド(byジョーンズ)にボーナムを加入させるためにグラントの電報攻撃→ボーナム、言い包められる→8月12日ジェラートストリート集合!ゴール!
駆け足!凄い!ホントにこれ10日余りでまとまったの?二週間ないよ?ほぼ一週間だよ?
それでクリスドレヤはどの辺りで脱退しようと思ったの?!
私の抱える疑問がスッキリ解消される日は来るのだろうか……ついでに、ジョーンズ夫人が、夫にバンド加入の打診を電話するよう促す切っ掛けとなった『ディスク』誌、ちょっと欲しい。
取り敢えず、加入を打診したペイジがプラントの肩を抱いて「一緒に金儲けしようじゃないか」と耳元で嘯いたという話と、プラント・ボーナムとペイジが共に昼食を取りに行った際 ※豆パンを買ったという説あり。ペイジは金なしの若い二人に対して、きっちりかっきり割り勘を申し渡して、(本当にこのバンドに入って大丈夫だろうか……)と、不安に陥った二人がバンド加入に二の足を踏んだ、という話は是非とも真実であってほしい。
③につづく