Black Dog’s Breakfast

鉛の飛行船への胸いっぱいの愛を変拍子で叫ぶブログ

いかにして彼女らは鉛のリズム体のミューズとなり得たか ③

パット奥さんの心労は絶えない。

 

「結婚したらドラムは辞めて働く」そう、結婚前に言った当時17歳の9歳年下の夫は結局ドラムから離れられず音楽の世界に舞い戻った。そんな夫を仕方ないと受け入れた。

 

狭い貸しトレーラー暮らし。その家賃に事欠くこともしばしば。夫は煙草代も捻出できず煙草を買うのをやめた(貰い煙草で凌いでたらしい。よく持ってかれた、とは当時の友人談)。なかなか芽は出なかったけど、最近やっと大きな仕事が入り、他所からもオファーが来始めた。「ドラムで飯を食ってく」そんな夫の夢も、もうすぐ叶いそう。ああこれで少しは安心……そう思った矢先、久しぶりに現れたあの男が、全てをひっくり返す話を持ってやってきた。ロバートプラント。夫の親友、そして悪友。

 

プラント曰く「パットは、俺とボンゾが一緒にいることをあまり良く思ってなかった 『アイツといると旦那が馬鹿になる』ってね」この二人、いろいろやらかしてるのである。

 

厄介な悪友が持ってきたバンド加入の話。ようやく軌道に乗り始めたと思ったのに、また、一からやり直し……?加入を打診された19687月時点で長男(第一子) ジェイソンボーナムは2歳になったばかり。まだよちよち。※1966715日生まれ

 

パット奥さんの心情、察して余りある。そりゃ、いい顔しないよ。難色示すよ。

 

 

いずれにせよ、「加入しろ!」「加入して!」と電報がじゃんじゃか40通も届くし、痺れを切らしたプラントが腕引っ張って連れてっちゃうし、そもそもボーナムは自分がやりたいと思ったら突っ走るたちだし……パット奥さんも止められないと悟っただろうな。そして、なんだかんだ旦那に優しいから、結局はその夢を支えることに選んだ。結果的には大成功だった。

 

ただ、あの悲劇を迎えた時、12年前に心配しながら新たな世界へと向かう背中を見送ったパット奥さんの胸中は、いかばかりだったかと思うとやり切れない気持ちになる。

 

 

④につづく